デジタルフィルターが周波数成分を選択的に通過または減衰させるためには、ある時点の入力値だけでなく、時間的に連続する複数のサンプルを比較する必要があります(これが遅延の原因)。そのため、因果的なデジタルフィルターは過去の入力、またIIRフィルターでは過去の出力も記憶し、それらを重み付き加算して現在の出力を計算します。この処理は差分方程式で表され、内部には1サンプル以上の遅延素子が含まれます。時間領域における k サンプルの遅延は、周波数領域ではe^(-jωk)という周波数依存の位相変化に相当します。したがって、異なる遅延を持つ複数の信号を合成するフィルターは、一般に振幅特性だけでなく位相特性も持ち、出力には位相遅延および群遅延が生じます。線形位相FIRフィルターでは群遅延が全周波数で一定であるため、波形は変形せず全体として遅れます。一方、一般的なIIRフィルターでは群遅延が周波数によって異なるため、各周波数成分の時間的位置関係が変化し、位相歪みとして波形に現れるます。したがって、問題となるのは遅延の存在そのものではなく、群遅延が周波数によって異なることです。
当社製品ではfiltfilt機能を用い、位相歪、群遅延を是正していますが、振幅特性が元フィルターの2乗になります。入力信号が元から持つ群遅延構造や測定系の歪みまで自動的に修正するものではありません。Homer3はゼロ位相化を目的として filtfilt を使っていますが、遮断周波数や減衰量を補正する処理は行っていません。fNIRSの信号解析には、計算処理に時間が掛かりますがFIRが推奨されます。
